大半の日本人がもう忘れかけているようだが、約8年後の現在も、3.11福島原発過酷事故後に発令された原子力緊急事態宣言は発令中である。その緊急事態宣言に関し、次のような点が指摘される.
1. 放射能汚染水は溜まり続けている:
2013年,IOC総会で、安倍首相は、原発事故後の汚染水は “under control” と宣言。2020年オリンピックが東京に決定。だが汚染水は今も増えている。福一敷地内で汚染水用タンクの設置場所が無くなりつつある。仏国から導入したALPS(多核種除去)装置も、トリチウム等の除去は困難。現在、ALPS装置で処理した後のトリチウム等汚染水は約100万トンがタンクに貯蔵され、現在も溜まり続けている(Handbook 原発のいま、原子力資料情報室、2019年)。政府と東電は、その汚染水を薄めて海洋放出しようと、2018年8月末、公聴会を開いたが、大多数の専門家や漁業者は大反対。(福島第一発電所の敷地内に設置されている汚染水のタンクの写真を参照:情報速報ドットコムより)。
2. 高レベル放射能の放出は続いている:
福一からは、現在も高レベル放射能が放出されている。例えば、2018年7-9月は、毎日平均526万ベクレルの、そして10月には312万ベクレルのセシウム(134と137の合計)が放出された。トリチウムに関しては、福一からの管理海洋放出は、2018年11月までに1198.6億ベクレルに上った (元SF小説家・春橋哲史のbloghttps://plaza.rakuten.co.jp/haruhashi/diary/ より)。
3. 「年間20mSv」を福島住民に強要する理不尽さ:
政府は福一の事故後、福島住民の年間被ばく許容量を1mSvから20mSvに引き上げ、現在もそのまま。国内の他の地域では、ICRP(国際放射線防護委員会)の基準である1mSvである(南相馬20ミリ撤回訴訟のHPよりhttp://minamisouma.blogspot.com/p/20.html)。
4.「自主避難者」に対する住宅支援の打ち切りは人権侵害!
2017年3月まで、福島からの避難者に対し、住宅支援があった。その後政府の独断的決定により、年間20mSvまでは安全とされ、それに伴いあちこちの地域で避難の解除が進んだ。避難解除された地域出身者で、福島に戻ることを拒否する家族は「自主避難者」と見なされ、住宅支援が打ち切られた。政府は住宅支援を打ち切ることで、彼らを強制的に福島に戻そうとしている。だが、経済的に大変な目に合いながら、特に幼い子供を抱えた家族は、子供の被曝のリスクを心配し、福島への帰還を拒否し、避難先で頑張っている(「避難の協同センター」からの情報より)。
5.小児甲状腺癌多発;だが政府は事故との因果関係を認めようとはしない。
2015年以来、福島県で小児甲状腺検査が行われてきたが、最初に検査を受けた37万人ほどの内、2018年12月時点で、272人が小児甲状腺癌と判明 (OurPlanet-TV, 2018年12月14日)。その発症率は通常であれば、100万人に一人か二人(「放射能から子どもを守る企業と市民のネットワーク」からの情報)。それにもかかわらず、政府は「事故との因果関係は認められない」;それは「スクリーニング効果」だと主張する。だが将来はもっと甲状腺癌患者が増えると予想される。
6.国連人権理事会から日本政府に対する勧告: (1) 子供らの被曝を可能な限り避け、最小限に抑える義務がある;(2) 子供や出産年齢の女性に対して、避難解除の基準をこれまでの「年間20mSv」以下から「年間1mSv」以下にまで下げること; (3) 住宅支援打ち切り等で帰還を強いるような圧力を掛けぬこと(国連人権理事会、2018年10月)。
国策の下で起こった過酷原発事故。原子力緊急事態宣言が今後いつまで発令されたままになるのだろうか?加害者である日本政府と東京電力はこの事態をどのように打開しようとしているのだろう。果たして、被害者の大勢が納得できるような解決策がみつかるのだろうか?