エッセイ:国家の富と幸福

最近、「国家の真の富」”the real wealth of nations” (The Economist, June 30, 2012, p.75) という題の大変興味深い記事に出くわした。それは国連から数カ月前出版された「包括的な富に関するレポート、2012年」、”Inclusive Wealth Report 2012“という分厚い研究報告書に関する論評だった。これまで経済学者達は、国々の富をGDPという形で計算し比較してきたが、この記事によるとそれは実際には富や資産の評価ではなく、単に物品やサービスの流れに基づいた所得の評価にすぎないとのこと。

その記事によると、国家の富の評価にはその国の天然資源や熟練労働力だけでなく、これまで築かれたインフラストラクチャーを含める必要があるとのこと。しかしながらこれまで、自然、人的そして物理的資源・資産の金銭的評価に関して、世界で広く受け入れられた手法は存在しなかった。したがって、この新しい国連報告書は、2008年のデータに基づく20の選択された国々の包括的な富を提示した最初の試みである。その報告書は三種類の資産、つまり製造物または物的資産(機械、建物、インフラ等)、人的資産(国民の教育と技能レベル)そして自然資産(土地、森林、化石燃料や鉱物を含む)を評価したものである。

どの政府当局者も往々にして、人材が最も重要な国家資産であると言う。今回検討された20か国のうち17か国に於いてはそれが事実であった。国家の人的資産は、その国の人口の平均修業レベル、就業者の給与、そして退職か又は死亡するまでに何年働けるか、という点を基に算出された。例えば、イギリスでは国家総資産の内、人的資産が実に88%を占め、米国では75%に上った。

この国連報告書によると、2008年度の米国の総資産が117.8兆ドルで20カ国中トップであったが、それは何と同年度のGDPの10倍もあったとのこと。米国に続いたのが2位の日本の55.1兆ドル、そして3位の中国の20兆ドルだった。しかしながら、国民一人当たりの総資産は日本が40万ドルを上回りトップに立ち、続いて米国で40万ドルを下回った。

第二次世界大戦の壊滅的破壊と敗北後、まだ米国の占領下に置かれた日本で生まれた私にとって、この様なデータを目にするのは本当に驚きである。私が小学校に上がった頃は日本も独立を取り戻していたが、多くの人々はまだその日暮らしの為に一生懸命働き、奮闘していた。世界地図の極東の端に位置する小さな我が日本と比較し、アメリカに関して読んだり聞いたりしたことは、時には間違った情報であったが、アメリカがいかに強大で裕福な国であるとの強烈な印象を私の心に植え付けた。

私がまだ鮮明に覚えているその様なある出来事は、小学校の地理の授業中に起きた。当時私達は世界の農業生産について学習していた。その時私たちの先生は、トウモロコシの主要生産国として米国を挙げたが、その後直ぐ付け加えたことは、そこではそれは人間の食料としてではなく、主に家畜の飼料として生産されているとのこと。当時私が知っていたトウモロコシとは日本人が食べていたものだけだったので、先生の言葉は、アメリカが日本に比べてはるかに豊かであるとの強力な印象を私に残した。たった今得た情報によると、結局のところ、私達はアメリカの家畜に与えられている物を食べているのだ、と思った。ずっと後にアメリカに渡った時、トウモロコシを食べている人々を見た。その時初めて、アメリカ人も日本人も人間の食料用に栽培されるスイートコーンを食べ、家畜の飼料になるのは違った種類のものだと知った。いずれにせよ、アメリカ人がより大きな家に住み、より大きな車を乗り回し、巨大なスーパーマーケットで買い物をする様子を目の当たりにし、彼らがいかに裕福かというイメージは長い間拭い去られることはなかった。

第二次世界大戦で壊滅的な破壊を経験し、正に灰の中から這い上がり、一人当たりの総資産がアメリカに追いつくまで我が国がいかに長い道程を登って来たかを認識すると、私達が達成したものには驚きを感じる。しかし、総資産が必ずしも私達の人生に於ける満足度や充実間を反映しているとは言えない。確かに、富は私達にある程度の精神的安心感や満足感を与えてくれるが、それが必ずしも人々の幸福への鍵ではないようだ。これは、やはり最近国連から出版された「世界の幸福に関しての報告書」 “World Happiness Report” に示されている。それによると、日本人や米国人に比べ、より貧しい国々の人々が人生に於ける幸福感や満足感をより強く味わっているとのことだ。

幸福感とは主観的なもので、計量的尺度で表すのは難しい。しかし実際私たちの多くは充実感や満足感を得ることを人生の究極の目標とし、日々努力を重ねている。この意味で、日本と米国の両国民は、心、頭脳、肉体の全要素を通して総合的に評価・感謝できるような真の、そして持続可能な富を得、幸福を達成する為、更なる努力が必要だ。

カテゴリー: ユーモア, 異文化, 経済発展, 哲学, 国家の富、資産, 幸福、幸福論, 従業員教育, 日本 タグ: , , , , , , , , , , パーマリンク

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