エッセイ: 所変われば基準が変わる(標準サイズの巻)

仕事や観光で世界をあちこち旅し、実にいろいろな民族の多様な文化及び価値観に遭遇した。余りにも違った価値観に唖然としたこともある。又、よその国に行くと、自国で慣れ親しんだ基準がそのまま通用しないことがよくある。

其のひとつが衣料品に表示されているサイズの基準の違い。死活問題とはほど遠いが、よく戸惑う。同じヨーロッパ内でも、フランス、スイス、イギリスでは少々違っている。

スイスのジュネーブで初めて勤務するようになった時、日本では「M」サイズの洋服を着用していた。メーカーやデザインによっては「L」サイズの時もあったが。ところがジュネーブで新しい洋服を購入すると、衣類の種類にもよるが、「S」サイズ、あるいはその下の「XS」 でも十分着られるものがあると判明。でもその後加齢に伴い運動不足、及びチーズやチョコレートの食べ過ぎが原因か、着実に身体全体に贅肉が付き、国際公務員として採用されて十年もすると、日本では「L」サイズ、そして間もなく「LL」サイズの物を買わなければならなくなった。

それくらい太った頃、帰国休暇で日本に戻り、ほっそりした旧友に久しぶりに会った。その時私はジュネーブで買った上着を着ていたのだが、彼女はそのデザインが気に入り、それを手にとって見たいと言う。脱いで手渡したところ、彼女はびっくりした。そのサイズが「S」だったからだ。ジュネーブは空恐ろしい所に違いない、と彼女は言う。私にでも「S」サイズが合うからだそうだ。正直言って私自身、日本の「LL」サイズの衣類を買うより、「S」サイズの物をジュネーブで買ったほうがいい気分だった。まだまだ太り過ぎではないのだ、と自分自身の慰めになったからだ。

その反対の状況も経験した。スリランカのコロンボに転勤した頃のこと。ある土曜日、水着を買いにデパートに行った。日本では「LL」サイズを買わなければならなかったので、同じアジアでは同様の基準だろうと思い、そのサイズを探していた。でも私が探していた場所には「S」,「M」、「L」しかなかった。「L」サイズの物を手に取ってみると、随分小さそうだった。辺りに「LL」サイズがないか見渡していると、若くてほっそりした男性店員がやって来て、「マダムは自分用の水着をお探しですか?」と聞く。そうだと答えると、「それでしたら、こちらにあります。こちらがマダムにぴったりのサイズです」、と言って他の場所から水着を持ってきた。だが彼から受け取った水着のサイズを見た私は、突然むっとなった。いくらなんでも失礼ではないか!彼が持って来たのは「XXL」だったのだ。何と言ってもそれは大きすぎる、と彼に抗議した。でも彼は自分の目に狂いはない、と自信たっぷりに言い張る。「マダム、とにかく一度試着してみてください」、と言う。内心彼に腹を立てながら、仕方なく試着してみると、ぴったりだったのには驚いた。さすが、その店の店員さんだ。

しぶしぶその「XXL」の水着を買って帰宅したが、スリランカ人は一般にほっそりしているので、サイズの基準が随分違っているのだろう、と自分なりに納得するしかなかった。

数年後、またジュネーブに転勤。そこでぎっくり腰を患った。いろいろ治療してもどうしても尾てい骨辺りから太ももの裏に痛みやしびれが残り、それをなかなか解消出来ないでいた。掛かり付けの医者に何とかならないか相談したところ、「貴女は太り過ぎ。体重を落としなさい。又痛みを和らげるには、よく歩くか水泳をしてその辺の筋肉を鍛えるしかない」、とはっきり言われた。その後頑張ってダイエットと運動を続け、一年かけて十三キロの減量に成功。医者の言った通り、痛みは殆ど消えていた。又日本の「M」サイズが着られるようになり、大変嬉しく思う。では現在の私にとって、スリランカでは一体何サイズになるのだろう。

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