エッセイ: フランス入国管理法の進歩

1992年1月末、スイスのジュネーブから国境を超え、フランスのフェルネーヴォルテールという町に引っ越した。ジュネーブのオフイスまで通勤時間は車で10分。買い物にも便利。面倒な点は滞在許可証の取得と毎年の更新手続き。引っ越しを決めた翌日、町役場でその申請をした。以前にもフランスに住んだので手続きは経験済み。80年代には県庁が正式許可証を出すまで町役場が仮許可証を出し、引っ越し荷物の通関も直ぐ可能だった。その為今回、手続き前にフランスへの引っ越しの手配をしてしまった。

ところが現在は県庁が仮許可証も出し、役場は許可証申請証明書を出すだけ。申請に必要な書類も前回とほぼ同じく旅券のコピー、勤務先の証明書、健康保険加入証明書等。だが今回はもう一つ必要だった。フランスに実際居住すると証明する物。例えばアパートの賃貸契約書。アパートを買った私は購入証明書があったが、それではだめらしい。賃貸アパートにしてしまうかもしれないからだそうだ。

では何を提出すればいいのか。電話か電気代の領収書だという。今引っ越そうとしているのにそれは矛盾していると言うと、係員は全くだと同意した。滞在許可証を申請しているのに居住証明書を提出しろというのも同然と弱々しく笑った。助言通り電話局に行き、電話番号を申し込み、入会金を支払いその領収書を提出した。正式な滞在許可証が降りるまで3カ月かかるそうだ。

引っ越しの当日、滞在許可証が未だ無い私の荷物は通関出来ないと税関史が言う。食い下がると、既にフランスに居住しているとの証明書を役場が出すなら許可すると言う。再び助言通り動き回り、結局例の電話領収書のお陰で引っ越しが無事完了した。訳のわからない手続きだった。

その後仮許可証が届き、申請して8ヶ月後に正式許可証が届いた。前回は10ヶ月待った。県庁の能率も少し上がったらしい。しかも前回は10ヶ月待っても有効期間は申請した日から1年だったので、直ぐに再申請する必要があった。今回は半年前からになっていた。有り難い。晴れた日、居間から眺めるヨーロッパ最高峰の雄大なモンブランがそれらの苦労をすっかり忘れさせてくれる。(ILOジャーナル、1992年11月号より。 注: 現在のフランス入国手続きはコンピューター化されてもっと能率が良くなっている。)

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