『コロンボ勤務:苦労多き女性労働者とスリランカのインド系タミール人を垣間見て』という題 (Posted in Colombo: A Glance at Toiling Women and Indian Tamils of Sri Lanka) の新しい著書(CreateSpace, 2010)が間もなく出版されることを嬉しく思い、ここにお知らせします。この回顧録は、特に弱い立場に置かれているスリランカの女性労働者、三グループに焦点を合わせたもので、スリランカの内戦が最も激しかった最中、国際労働機関(ILO)のコロンボ事務所長として勤務していた頃、ILOの大義名分である「社会正義」を職場または個人レベルで如何に促進しようとしたかを記述したものです。下記はその概略、概要です。誠に恐縮ですが、この著書も英語版のみです。
「コロンボ勤務」の概略:
「友田シズエ著「コロンボ勤務」は、学術的でなおかつ感動的な内容であり、著者が如何にILOコロンボ事務所長として働くようになったか、そして如何にILOの大義名分である「社会正義」を、職場や個人的レベルで扱った労働問題を通して促進しようとしたかを記述している。「スリランカの概略歴史」、「スリランカの苦労多き女性労働者」、「スリランカのインド系タミール人」、および 「エレファントパスの危機」等、読者の心を引きつけてやまない全25章から成るこの著書は、スリランカ独立以降、国民を引き裂いてきた民族紛争や弱い立場に置かれた人々が直面する労働問題を書き表している。更に、著者のお手伝いさんであったデヴィが著者の心からの応援と援助のもとに新しい技術を習得し、より自信が持てる女性になるために努力する行程を描いている。」
「日常の自爆テロの恐怖を乗り超え、デヴィや彼女の子どもたちのせっぱつまった日々のニーズに応えながら、デヴィが徐々にだが着実に従順な人間から自信を持つ女性へと変化していくのを著者は確認する。これは女性のエンパワーメント(権限を与えられること)が如何に社会発展を左右するものかの良い一例である。」
詳細な概要:
「ILOコロンボ事務所長だった友田シズエは、この著書でスリランカの悲劇的な内戦、およびスリランカ社会の複雑な民族構成を深い興味を持って分析している。それは、心の痛み、苦労、苦悩を描写していながら、希望の物語でもある。著書は、特に弱い立場に置かれている三グループの労働者、つまり貿易特区の縫製工場で働く女性労働者、中近東でハウスメイドとして働く女性出稼ぎ労働者、および悲惨な状況に置かれた何十万というスリランカのインド系タミール人労働者、が直面する労働問題に焦点を当てている。」
「女性労働者が貧困から脱出しようともがく背景で、著者はその様な女性労働者を絶望から救おうとして光を投じている。それは女性達をより自分に自信が持てるようにすることであり、将来に対し肯定的になり、控えめながらも人生の目的や夢が持てるように援助の手を差し伸べることである。ゆっくりと、着実に、女性労働者が力をつけ、社会でより重要な役割を担うようになることが社会経済発展の鍵である、と著者は信じている。」
「スリランカ社会はパラドックスが蔓延している。例えば、縫製工場で働く女性労働者、女性出稼ぎ労働者、及びプランテーションの労働者達は、一人が得る賃金はほんの微々たるものだが、これらの三分野はスリランカが稼ぐ貴重な外国為替の最も重要な供給源になっている。それにもかかわらず、彼女達がこれまで家族や地域社会を支え、国家経済に貢献してきた事実に対し十分評価されていない。」
「著者は、スリランカ系タミール人とスリランカのインド系タミール人に大きな違いをみる。前者はスリランカに二千年ほど前から住んでいる民族で、植民地時代には統治政府の役人として重要ポストに就いていた人たちが少なくない。後者は植民地時代、スリランカの中央山岳部にイギリス人により切り開かれたプランテーションで働く為、南インドから連れて来られた下級階層の貧しい労働者やその子孫である。彼らには教育及び他の機会が殆ど与えられなかった為、幾世代にも渡り、同じプランテーション分野で貧困に喘いで生きながらえてきている。」
「「スリランカの概略歴史」、「インド系タミール人の為の教育と福祉」、及び「エレファントパスの危機」等を含む、全25章から成るこの著書はまた、著者のスリランカのあがきの考察でもある。常に自爆テロの恐怖や民族紛争の苦悩・苦痛と背中合わせの中で得た貴重な体験を記述している。これはスリランカの歴史、労働、民族、ジェンダー等問題を知るうえで非常に有益な著書である。だが同時に著者友田シズエは、その中にあっても希望と可能性が持てることは基本的人権だと強調する。」